危険な世界史 中野京子 角川文庫 読書感想

レーピン展観賞後のミュージアムショップで購入。
定価552円という絶妙なコスパ感に誘われて、レーピン展観賞後の感動も相まって即購入しました。
危険な世界史の18世紀最大のスターとして、この世界史コラムの基調になるのは、フランス革命時の王妃マリーアントワネット。
その王妃が最後は断頭台の露と消えて(露とか、そんな奇麗なもんじゃないだろう)共同墓地に投げ込まれる。
その同時代に半ばのたれ死にしたモーツアルトも同じ運命で2人は子どもの頃、オーストリアの宮殿で求婚ごっこをしたという。
奇遇を感じるが、本当に結婚していたら(ある筈無いですが)この組み合わせの方が世界平和的に見て、理想カップルになっていたのでは、とため息が出てしまう。
この微笑ましさの後の残酷な運命という王族ならではの際立つ運命から世界史は始まる。

狂人的天才と能天気な好事家の僅かな接点に何か勿体なさを感じてしまう人も多い思う。
(後日談ですが、マリーアントワネットの骨は共同墓地からサン・ドニ大聖堂に再埋葬されている)


また、奥さんを23年間幽閉したジョージ一世(1727年)(マリーアントワネット生誕28年前)とか、姉弟で殺し合いの権力闘争したピョートル大帝とその姉皇女ソフィアとか、欲と殺意が渦巻く宮廷内の苛烈なドラマの様子を紹介している。

その他、芸術家やナポレオンの百日天下に翻弄された名も無き市民の不幸なこぼれ話もあり、歴史人物の生き様がバランス良く納められている。
読者が「この人になっていたかなぁ」と共感させられる人物が何処かに潜んでいそうな、豊富な人物列伝となっており、偉人や賢人ばかりの歴史小説に飽き飽きしてる(流石に最近そんなのは少ないですが)人にはお勧めの奇人・変人・凡人の面白可笑しさ、血筋に拘る王家のみっともなさへの視点に絞った本で楽しく読める。


マリーアントワネットの最大の不幸は王家に生まれた事、と言うのはフランス革命好きならだれもが頷くネタだけれども、18世紀最大のスターなのは、革命がとことん理解できずに自滅してしまった凡人性に多くの人が強く共感してしまうからではないだろうか。


正論を吐き、富国強兵に勤しんで国民から慕われた母マリア・テレジアよりも、簡単に歴史に翻弄され、ズレた感覚で国民から嫌われたマリーアントワネットには自分だったらもっと上手くやれたのに
(革命を生き抜き、子孫は取り敢えず残せた?)というシュミレーションゲームが容易く出来る所に有るのかも知れない。


歴史的人物に幻想を抱くよりも呆れたり、諌めたりしたくなる、煩悩剥き出しの人間像で世界史が身近に感じられる面白本だ。



危険な世界史 中野京子