衆議院議員、前経産大臣の甘利明氏がテレビ東京とその記者三名を名誉毀損で訴えている裁判について、その背景を探った。
テレビ東京のディレクター阿部欣司(あべ・きんじ)記者(37)が同テレビ番組「週刊ニュース新書」のインタビューで、甘利明氏に原発事故の備えは安倍政権時代に万全だったかと質問した事に甘利氏が「地震への備えはあったが津波への備えはなかった」と答え、それに対して、地震や津波被害での原発事故の危険を指摘してある安倍政権に出された「質問主意書」を見せた所、黙り込み、別室へ消えた。
それを番組放送中、「取材は中断となりました」とテロップとナレーションを被せた事で「逃げたように放送された」「名誉を毀損された」として謝罪広告と損害賠償を求めたものだ。

インタビューが中断された後、どんなやり取りが2人の間で行なわれたのか。
そこでのやり取りが裁判記録に記載されていた(乙第7号証)

阿部記者が甘利明氏にインタビューしたのは2011年5月17日衆議院議院会館で。
午後一時半から行なわれた。

インタビュー途中で別室へ移動した甘利氏は阿部記者を呼び、インタビューを放送しないように要求したと言う。
以下裁判記録より〜


甘利「とにかく暗がりでよく判らない上にうる覚えで言った言葉をカメラでしっかり撮っていたじゃないか。それを消せと言っている」
甘利「消さないと放送するにきまっている。流されたら大変な事になる。あなたも一回そういう目に遭った方が良い。誹謗中傷されたらどんなに辛いか」
阿部「まだ取材の最中でありどこをどうするのかなどは何も決まっていない」

甘利「私には肖像権がある。取材を受けた人間が流すなと言っている。放送は認められない」
阿部「一端、引き取らせて頂き局に戻って検討する」

甘利「引き取ると言ったってどうせ流すんだろう流さないと番組が成立しえないじゃないか」
阿部「流すかどうか決めてないが仮に流さなくても前半の原子力の利点や功罪について聞いた部分などは使わせて頂けるんじゃないかと思う」

甘利「何度も言うが原子力安全委員会が安全基準を決める。彼らが決めた基準を経済産業省は事業者に伝えるだけ。安全委員会は地震や津波のプロが集まってる組織。そこが決めてるんだ」

甘利「大臣なんて細かい事なんて判る筈無いし、そんな権限がない事くらい君も判ってるだろう。答弁書だって閣議前の2分間からそこらで説明を受けるだけだ」

甘利「原発は全部止まる。企業はどんどん海外へ出て行く。もう日本は終わりだ。
落ちる所まで落ちれば良い。マスコミだって同じだ。お宅も潰れないと判らないもんだ。もう私の知った事ではない」

阿部「この後、塩崎さんのインタビューの時間が迫っている。いずれにせよ、この扱いは私ひとりでは
判断出来ないので戻って検証したい」

以上やり取り終わり。
 
この後、甘利氏の強い抗議を受けて、テレビ東京は別室へ消えた甘利氏の姿を放送した事を社長名で謝罪文を甘利氏に出し、訂正放送を行なった。
それに対して甘利氏側は再度、謝罪放送を流すよう要請し、テレビ東京側がそれを拒否すると、甘利氏は名誉毀損の損害賠償請求と謝罪広告の訴訟を起こした。


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