東急大井町線の高架下に住む野尻浩史さん(73才)は今家主である東急電鉄から立ち退きを迫られ、
裁判を起こされた。
東京地方裁判所は立ち退きの仮処分を認める判決を下したばかりだ。

野尻さんは1937年の7月22日生まれ。
東急大井町線の高架下に6才の頃引っ越して来た。
親は国鉄職員、母親は一階に店を出し、6人兄弟の8人家族で高架下に住んだ。
戦後直後の事で母親は父親が仕入れて来た品物を店で売り、生計をたてた。

67年間住み続けていた高架下住居に、三年前の5月に突如家主である東急電鉄から立ち退きを迫られた。
野尻さんが拒否すると東急電鉄は「住民立ち退き訴訟」を起こして来た。
そして家主とトラブルが起きたら、家賃は三割増にするという貸し出しの時の条件を持ち出され、月二万三千五百円の家賃が四万二千円に跳ね上がった。

東急側から訴訟を起こし、それがトラブルだとして野尻さんのような高齢者に家賃の割り増しを請求するという行為に対して東急電鉄の用地課星野氏は「今裁判中なので答えられない」と話した。

一時貸しの更新を重ねて来た為に、居住権の主張も退けられた。
野尻さんは立ち退き仮処分の停止を求めて50万円の担保金を裁判所に出した。

野尻さんは今回の裁判について「これは裁判官の問題。裁判官は法律を使いこなす職業、運用次第ではベニスの商人や大岡裁きのような人情のある判決も出せたはずだ」
と残念がる。

東急電鉄側の主張として立ち退き請求は耐震補強の工事の為としている。
が、今まで高架下という悪環境を長く効果的に運用出来た利点もあった筈であり、行き場のない老人の追い出し裁判には厳しい批判の声が集まりそうだ。

都市の開発の陰に、戦後の経済を支えて来た高齢者達の排除が行なわれている事実がある。
発展と開発の繰り返しが弱者を圧迫し、さらに極端な格差が進み、誰でも簡単に格差のピラミッドから滑り落ちてしまう社会が出来上がり、その先にあるものは何なのか。
答えは近い未来にあなたに現れるかもしれない。


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