2015年4月6日月曜日午後11時15分放送のテレビ朝日「TVタックル」で「杏林予防医学研究所所長」の「山田豊文」氏が「断食は認知症に効果がある」と発言しました。

これについて、「杏林医大病院」に問い合わせたところ、「そのような研究所とは杏林医大は関係ありません」との返事がありました。

 山田豊文氏の履歴では医師免許を取得したかどうかも解らず、最終学歴も書いてありません。
「断食は認知症に効果がある」との発言は確かな医学的知見に基づくものなのか、非常に疑わしいものです。

 鵜呑みにしないで下さい。

 番組中に山田氏が「エール大学でもネズミ(!)の実験で効果があると言いよる」とした研究ですが、エール大学が研究発表したマウス実験で得た研究成果の「断食で増えるβヒドロキシ酪酸が病気を遠ざける」を読むと、断食での身体の脂肪代謝で増える物質(βヒロドシキ酪酸)によって免疫力が上がり、炎症症状が軽減する研究結果報告があるものの、認知症への治療については触れられておりません。(出典1)

 そもそも、マウスが認知症を発生しているかどうかどうやって調べるのでしょうか。

 また、断食で得られる美容・長寿効果において、よく知られているのが「サーチュイン遺伝子」です。これはマサチューセッツ工科大学の研究者グループが発見した細胞で、「長寿遺伝子」と呼ばれているものです。

 寿命を延ばすだけではなく、老化防止や動脈硬化、認知症を防ぐといった効果があるとされ、不老長寿をもたらす遺伝子として注目を浴びています。

 この遺伝子は普段眠っているとされ、活性化させて長寿効果を得るには「カロリー制限・飢餓状態に置く」と「レスベラトロール」を摂取する、二つの方法があるとされています。(出典2)

 しかし、これらは身体健康な人間が前提で、認知症への効果は「予防」という領域に留まっているようです。

 身体の弱った高齢者や既に認知症を発生した患者を「カロリー制限・飢餓状態」に置く事でのリスクが想定されておりません。

 衣食住足りた健全な大人が「長寿遺伝子活性化」の為にカロリーコントロールや断食をするのには問題ないかも知れません。

 しかし、既に認知症を発症した患者への「治療効果」があるのか非常に疑わしいものです。

 安易な「認知症患者には断食が効く」という風評が流れない事を願います。
  
 (出典1)「断食で増えるβヒドロキシ酪酸が病気を遠ざける」

  (出典2)「サーチュイン遺伝子を活性化する2つの方法