木星通信 @irakusa

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カテゴリ : ブックレビュー

本書は2005年、今から7年前に出版された本で、今日の階級格差社会を予言しつつ、イギリスの階級格差社会と比べ、違いも多いが、その光と陰の部分を追い、日本にこれから来る階級格差社会の暗部を予言している。

今まさに注目したい、社会問題、官僚と民意の壁、政治家の犠牲心の無さ、現代の貧困の問題への原因究明と解決作が示唆されている名著だ。

著者は日本で目指されたアメリカ型競争社会が経済発展を実現し、アメリカのドラマに出て来る家電や車を持つ生活こそが幸福で成功の証しだと夢を刷り込まれながら、実はイギリス型の不平等な社会、階級社会が日本経済に育ちつつある、と検証している。

イギリスに10年住み、ジャーナリストをしながらあらゆる階級をつぶさに見聞きしていた著者。
そのイギリス型階級社会の根底にある「生まれ育ち」からくる身分型階級社会とは違い日本では教育環境からくる極端な学歴差別社会があると指摘する。

それは「どんなに努力しても、成果を上げても、学歴のみが尊重され、出世や昇級の道が閉ざされてしまう」事であり、さらに問題なのはイギリスではエリートたる者が示さなければならない責任感や自己犠牲が日本の偏差値エリートには欠如したままシステムとしての階級社会が押し付けられ、TOPの座が与えられようとしている事に問題があると言う。

さらに階級が固定化された社会は必ず活力を失い、衰退する、とも予言する。
何故なら非エリートとされた若者のたちが将来に希望を持てず、モラル崩壊するからだ、と警告する。
今まさにこれから日本経済、日本社会が衰退する遠因が極端な学歴社会が生んだ「高い身分には責任が伴う(ノブレス・オーブリージュ)」が教育されていない偏差値エリート達である、という皮肉な現実が著作の最後に記されている。

失墜する日本社会において、その欠点は偏差値エリート達である、という視点は納得する。
学歴礼賛は決して悪い事ではない。
ただそれのみが人の価値を判断し、人間本来の能力を人びとが引き出し合い、社会を活性化する事への妨げになったり、学歴社会からドロップアウトした人間への差別に繋がる事は、モラル崩壊を起こし、社会の治安や秩序が乱れる原因となる。

社会崩壊は日本崩壊であると思う。

貧しい者だけではなく、富める者、エリートを研究し、その弱点や問題点を指摘する事で実際の不平等社会の改善を求める事が出来るかも知れない。
貧困や官僚の社会問題はエリートの欠点を抉る事で解決策を見いだす事が出来る。
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しのびよるネオ階級社会



危険な世界史 中野京子 角川文庫 読書感想

レーピン展観賞後のミュージアムショップで購入。
定価552円という絶妙なコスパ感に誘われて、レーピン展観賞後の感動も相まって即購入しました。
危険な世界史の18世紀最大のスターとして、この世界史コラムの基調になるのは、フランス革命時の王妃マリーアントワネット。
その王妃が最後は断頭台の露と消えて(露とか、そんな奇麗なもんじゃないだろう)共同墓地に投げ込まれる。
その同時代に半ばのたれ死にしたモーツアルトも同じ運命で2人は子どもの頃、オーストリアの宮殿で求婚ごっこをしたという。
奇遇を感じるが、本当に結婚していたら(ある筈無いですが)この組み合わせの方が世界平和的に見て、理想カップルになっていたのでは、とため息が出てしまう。
この微笑ましさの後の残酷な運命という王族ならではの際立つ運命から世界史は始まる。

狂人的天才と能天気な好事家の僅かな接点に何か勿体なさを感じてしまう人も多い思う。
(後日談ですが、マリーアントワネットの骨は共同墓地からサン・ドニ大聖堂に再埋葬されている)


また、奥さんを23年間幽閉したジョージ一世(1727年)(マリーアントワネット生誕28年前)とか、姉弟で殺し合いの権力闘争したピョートル大帝とその姉皇女ソフィアとか、欲と殺意が渦巻く宮廷内の苛烈なドラマの様子を紹介している。

その他、芸術家やナポレオンの百日天下に翻弄された名も無き市民の不幸なこぼれ話もあり、歴史人物の生き様がバランス良く納められている。
読者が「この人になっていたかなぁ」と共感させられる人物が何処かに潜んでいそうな、豊富な人物列伝となっており、偉人や賢人ばかりの歴史小説に飽き飽きしてる(流石に最近そんなのは少ないですが)人にはお勧めの奇人・変人・凡人の面白可笑しさ、血筋に拘る王家のみっともなさへの視点に絞った本で楽しく読める。


マリーアントワネットの最大の不幸は王家に生まれた事、と言うのはフランス革命好きならだれもが頷くネタだけれども、18世紀最大のスターなのは、革命がとことん理解できずに自滅してしまった凡人性に多くの人が強く共感してしまうからではないだろうか。


正論を吐き、富国強兵に勤しんで国民から慕われた母マリア・テレジアよりも、簡単に歴史に翻弄され、ズレた感覚で国民から嫌われたマリーアントワネットには自分だったらもっと上手くやれたのに
(革命を生き抜き、子孫は取り敢えず残せた?)というシュミレーションゲームが容易く出来る所に有るのかも知れない。


歴史的人物に幻想を抱くよりも呆れたり、諌めたりしたくなる、煩悩剥き出しの人間像で世界史が身近に感じられる面白本だ。



危険な世界史 中野京子


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