2013年3月25日午後四時四十五分から東京地裁615法廷でニューテックグループの会長白川司郎氏がジャーナリストの田中稔氏を名誉毀損等で訴えた裁判の第七回口頭弁論が開かれました。

 争う内容は、『週間金曜日』2011年12月16日号に掲載された田中稔氏の署名記事「白川司郎氏のゴルフコンペに集まった“大物”達の名前」の文中に書かれた(白川司郎氏は)「大物フィクサー(仲介役)との表現が名誉毀損にあたるとして、白川氏が6700万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めるものです。

 この裁判は原発利権を追求する報道を封じるのが目的であるとして「原発フィクサー訴訟」「原発スラップ裁判」と呼ばれています。


 被告田中稔氏への賠償金額が高額の為、弁護士への着手金だけでも約300万円がかかると言われています。スラップ裁判をしかける意図は裁判の勝ち負けではなく、高額な裁判費用と煩雑な手続等で被告に金銭的にも精神的にも大きなダメージを与えるのが目的なのです。

 スラップ裁判の原告、白川司郎氏は「ニューテック」という原発警備会社の会長ですが、これは警視総監経験者の集まりで発足したものです。原発施設をテロから守るというもので、六ヶ所村の核燃サイクルの警備するのが実態ですが、警察官僚の天下り先と原発施設が堅く結びついている事が分ってきました。

 問題の『週刊金曜日』の記事中にある、白川氏がゴルフ接待した相手はパチンコメーカー代表の熊取谷稔氏らで、「熊取谷氏は永田町で政財界のフィクサー(仲介役)として有名であり、フィクサーがフィクサーを接待する特異なコンペだった、記事内容は正しい」と被告は意見陳述しました。

 それに対して原告側は「知らない」とか「第三者の作成した記事の引用では真実性・相当性の証明にならない」といった逃げの姿勢に終始している事も明らかになりました。また弁護士も筆頭の土屋東一氏ではなく、副代理人上松信雄氏一人だった事から、原告側の「裁判のやる気」が疑われるものでした。

 田中稔氏は意見陳述の最後に、フランス・パリに本部を置く有力な非政府組織「国境なき記者団」がこの訴訟を言論妨害事件として世界に発信している事も裁判官に告げ、この裁判は
「世界のメディアが厳しい視線を注いでいる」と訴えました。

 田中稔氏は「他人の記事の引用だけではない。自分も取材した」と反論し、自分が書いた記事の真実性・相当性の立証の為に原発施設利権に食い込むフィクサー達を取材する記者達を証人として法廷に呼びたい、と裁判官に訴えました。

 また裁判官は原告にも主張を求め、これから言論の自由を求めて、記者達と原告が法廷に姿を見せて争う事になりそうです。

 傍聴席には『週刊金曜日』編集長も姿を見せ、裁判後の報告会では「早く田中さんが自由に取材できるようになってもらいたい。原発フィクサーはまだまだ沢山います、これらも私達は追求して行きます」と挨拶して、田中稔氏を全面的にバックアップし、原発スラップに怯まずこれからも原発利権を追求して行く事を宣言しました。

 次回、裁判期日は5月27日午後一時半から。同じく615法廷にて。(写真は裁判終了後、報告会で応援傍聴者に挨拶する田中稔氏。)

写真

 追記:この裁判は原告白川司郎氏が被告田中氏に対して「裁判取り下げ」を表明し、田中氏と立会人と原告と三者で協議の後、2013年8月16日に田中氏が裁判取り下げの同意書に署名・捺印し、「裁判取り下げ」が確定しました。



Twitter @irakusa