医療業界の内視鏡売り上げトップシェアを誇る名門・オリンパス株式会社(代表:笹宏行)に、江戸時代のような座敷牢があったら...そんなまさか?と思う方も多いかも知れない。しかし、それは実在しているらしい。

 東京・西新宿にあるオリンパス株式会社社員の濱田正晴さん(52)は、先にお伝えしたように、オリンパス社内に設置された「オリンパス・内部通報ヘルプライン」に上司の不正な引き抜き行為をメールで通報したところ、当該上司にまでそのメール が廻され、その直後、営業部のチームリーダーから職位のない研究部門とは名ばかりの閑職へ異動になる。(内部通報2007年4月、異動人事・同年10月)

 さらにその濱田さんを孤立させる為に、全社員や外部との接触禁止令が出され、社員は誰も濱田さんに口を利かなくなった。事実上のパワーハラスメントだ。
社命で実質、オリンパスグループ四万人から苛められる日々が開始された。 

 濱田さんはこれに屈せず、会社の自分への対応は内部通報したための報復人事であるとしてオリンパス社と執行役員を相手取り、配置転換無効と職位剥奪、昇進停止などによる損害賠償請求を提訴した。 (2008年2月)

 濱田さんの会社を愛するが故の「正しい事をしたの者への不正な仕打ちを是正して欲しい」との願いは司法の場で認められ、高裁で原告の主張を認める判決が下され、笹宏行社長の上告意志決定により、オリンパス側が上告したものの、最高裁も高裁の判決を支持、上告を棄却し、濱田さんの孤独な闘いは明るい結末を迎えたかに見えた。(最高裁の上告棄却決定は2012年6月28日)

 しかし、オリンパス側の小暮俊雄総務人事本部長は再び濱田さんの願い(最高裁も認めた主張)を無視し、子会社への配置転換を執拗に迫った。濱田さんはこれも断固拒否し、グループコンプライアンス推進部への移動を希望し、何度か交渉したが、
小暮
俊雄総務人事本部長はグループコンプライアンス推進部に人員を増やすなどして濱田さんの移動希望を阻止したと言う。

 最高裁判決は高裁の「配置転換無効」を支持した。と言う事は、最低でも内部通報前のオリンパス株式会社のチームリーダーに濱田さんを戻さなければ、オリンパス社は判決に従った事にはならない。
それが子会社への異動というのは話が違うのではないか。
 
 しかも、ある社員の話によると、濱田さんが小暮俊雄
総務人事本部長により新しく異動を命じられた部署は通称「パワハラ部屋」「追い出し部屋」とよばれているフロアだそうだ。事業敷地内の離れにあり、夜になると凄い怒鳴り声が聞こえて来る事もあったそうだ。
そこに「オリンパス裁判」で有名な濱田さんが着任すると表立ったパワハラは陰を潜め、普通の静かな職場環境になったと喜ばれていると言う。
なんとも言えない奇妙な話だ。


 それにしても、オリンパス社は最高裁の決定に従う素振りも見せながら、さらに濱田さんを希望とは程遠い部署へ異動命令を出し、その部署は会社にとって邪魔な社員を会社から追い出す「パワハラ部屋」「追い出し部屋」だというのだから呆れた話だ。

 さらに、オリンパス社員の話では最近、オリンパス社の内部通報規程は「悪意」に基ずく通報者の氏名は公表すると改訂(改悪?)されていると言うのだから驚いてしまう。

 オリンパス社は第三者委員会から内部通報者制度を充実させるように求められていたが、公益通報者保護法にも規定のない「悪意」を持ち出し、通報者の匿名性を奪い、通報者をさらし者にすると公表したのだから、これでは社員は恐ろしくて通報出来なくなってしまうだろう。
一体、何の為の内部通報制度なのか。ある社員は、「これは今度こそ、司法に守秘義務違反を問われない為の工作」だと言う。

 ちなみに、「悪意」の意味を調べてみた。悪意とは普通、害意や悪巧みの意識を持つ事を言うと考え勝ちだが、法律用語ではそうではない。引用「法律用語としての悪意は、ある事実について知っていることをいう。これに対して、ある事実について知らないことは善意という。この用法における善意・悪意は道徳的価値判断とは無関係である」引用終わり。

 つまり、事実関係を知ってる人間は法律用語では「悪意」を持つ、と認定される。オリンパス社のコンプライアンス規定は法律用語を逆手に取って守秘義務を回避、誰でも事実を通報すれば「悪意」と認定されて氏名を社内に公表されてしまうのである。

 一体、オリンパス社代表の笹宏行氏はこの裁判から何を学んで来たのだろうか。内部通報者を抑制し、卑劣な報復人事を繰り返し続ける事は社内の自浄能力を無くし、社員と企業の一体意識を損なうだけになる。

 告発者を潰し、自浄能力を失った社会は必ず衰退する。
これらは杞憂でも警告でもなく、歴史が証明している。会社も同じ事だろう。

 オリンパス社は「正しい事をした者を不正に扱うような会社であって欲しくない」という濱田さんの愛社精神にいつまで泥を塗り続けるつもりなのか。最高裁で会社の処遇が違法とされても濱田さんへのパワハラは止まる事なく、陰湿に進行し、濱田さんは再び司法の力に縋って処遇の改善を求めるしかない。

 司法による早期の実効性のある解決が求められているが、その前にオリンパス社の品格、遵法精神が厳しく問われるべきだろう。(了)


【告知】濱田正晴さんの次なる闘いは以下の期日に行なわれます。
 

平成25年5月23日(木) PM3:00~東京地裁527号法廷


被告1:TK総務人事本部長

     (オリンパスグループ最大級人事権力者の個人責任を問う)

被告2:オリンパス株式会社(代表者:笹宏行社長)


古久保正人裁判長,伊良原恵吾裁判官,内藤寿彦裁判官

(民事第19部 合議B1係 労働部)

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           写真は裁判報告会での濱田正晴さんと光前弁護士。

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