2012年7月21日、「長良川河口堰報道弾圧をめぐる三つの闇 ~朝日新聞の闇・官僚(建設省)の闇・裁判所の闇~」のシンポジウムが草の実アカデミー主催で開催された。場所は新宿、新大久保地域センター。
元朝日新聞社の記者・吉竹幸則さんは河口堰の調査報道の記事を差し止められた。
建設省、朝日新聞、裁判所の三つの闇によって、吉竹さんの調査報道が潰され、無駄な公共事業が強行された実態を語った。

この長良川河口堰の事業計画は必要のないもので、堰を作らないと、洪水によって決壊してしてしまう事になる架空のデータを載せた報告書で着工しようとしているのを土木建築専門の学者達の協力によって吉竹さんが突き止め、この工事計画が建設省の省益を得る為の物である事を告発しようとした。

しかし、
1990年に取材を完了し、新聞記事化する事をデスクに求めていたが、名古屋本社ではその記事は差し止めになり、その後栄転した東京本社でも記事化するよう求めたが、またもや名古屋本社の差し金によって記事差し止めになった。
1993年に河口堰建設に関しての記事が署名入りで朝日新聞に掲載されたが、続報は出されなかった。

その後吉竹さんは配置転換され、記者職を外されてしまった。
報道弾圧は記事差し止めだけではなかった。
人事異動の理由が長良川河口堰の調査報道潰しの為の左遷であったのなら、読者は記者をも潰す新聞社に社会告発、社会浄化を期待する事は出来ない。

2500億円もの公共事業費が投入された長良川河口堰工事が、まったく治水的にも利水的にも、無意味な土木事業であったという報告は衝撃的だ。
自然環境にも取り返しのつく事の無い重大な悪影響を与えた事だろう。
この報告が記事化されていれば河口堰建設は防げた筈と吉竹さんは悔しそうに語る。

社会の木鐸、とされる新聞社も、国策、省益の絡む告発記事を嫌い、労働組合は記者の孤軍奮闘を助けず、この記事潰しを黙認する。
吉竹さんはこの報道弾圧について、名古屋地裁に提訴するも実質審理は一度も行なわれず、高裁でも最高裁でも法廷でこの建設省の闇、新聞社の闇に光が当てられる事は無かった。
裁判所もまた、国策と省益の味方だった。

公共事業をでっち上げて省益を貪る建設省の闇、それを暴く記事を差し止めて記者からペンを奪った朝日新聞の闇、そして裁判所も闇を暴く機能を持たず、二つの闇に繋がっていた。
重なる闇は大きく、社会告発をする人間のリスクの大きさは計り知れない。
吉竹さんは退職後、この講演のタイトルとなった「報道弾圧」を上梓した。
三つの闇に光を当てようと闘った吉竹さんは今、定年退職したの悠々自適の身だ。
これからは、封印された記者魂を蘇らせ、既存の新聞記者がなし得ない様々な闇を暴く活躍を期待したいと思う、有意義なシンポジウムだった/
クリック
↓ ↓ ↓
報道弾圧

月一回、様々な社会問題を提起して語り合うシンポジウム開催。
↓林克明さん主催の↓
草の実アカデミー